『ねぇ。 何で生き物には男と女があるのかなぁ……』
ソファーに放り投げた洗濯物を片付けながら、ポツンと呟いてみる。
渇いたタオルは、ゴワゴワしてて肌に当たると少し痛い。
今さら、柔軟剤を入れ忘れた事を知り、何だか全てに嫌気がさした。
『男女ってすぐ喧嘩になるじゃん。 私が女で、智司が男だから……』
なーんて……
性別が全ての原因だとは思わないけど。
智司が女友達だったら、くだらない事の喧嘩は無くなるだろうと思ったら、どうしても性別のせいにしてしまう。
現実逃避……
考えなきゃいけないのは、そこじゃないのに……
『男と女なんて、セックスするために決まってんじゃん』
……はぁ?
『ば、馬鹿じゃないの!?』
もっと他にあるでしょうが!
恋するためとか、愛し合うためとか!!
『マジな話。 ただセックスする上で凸(デコ)と凹(ボコ)がないと、成立せんしね』
『……綺麗な顔して、意外と卑猥な事言うなぁ……』
夢がないよ、夢がさぁ……
『恋愛は男女じゃなくても出来るよ。 珍しいから皆、変な目を向けるけど…… その気持ちに間違いはないと思うし』
何でこんなに聴き入ってしまったのか……
よくわからないけど、黙って聞いていたくなってた。
輝の考えを、ずっと……
『ただ子孫を遺してくために、精子を作る者と卵子を作る者が必要なんだ。 男と女が……』
ん?
だんだんと言い方に刺が……?
『だからセックスが愛情の全てとは限らないんだよ』
今までに、こんな真剣な輝を見た事があっただろうか。
きっと……ない。
何だか、ちょっと恐いんですけど……
『と、俺は思うんだけどね。 中には「セックス=愛」と思ってる人もいるから、一概には言えないよ』
あ、表情が解(ホグ)れた。
いつもの輝の笑顔だ。
天使みたいな、優しい顔……