野球のボールを見つめる目が好きだった。
私より部活を優先するけど、そんな所も好きになった。

なのに……
いつから、こんなふうになってしまったんだろう……





『おっ。 今日は、可愛い格好してんじゃん』

アパートに着き、扉に手をかけた途端に隣の部屋から顔を出す。

……輝が。
ストーカーかよ、あんた。

『俺も今、仕事から帰ってきてさ』

どうでもいいっつの。

『ってわけで飲むべ。 朝まで』

って、勝手に決めんな!!

『ほんっと自己中! 誰のせいで、こんなんなってると思うの!?』

輝があんなゲーム始めなきゃ、ホストクラブなんか行かなかった。
智司とも喧嘩にならなかった!

全部……全部あんたが……

『じゃあ話してよ。 文句くらい、いくらでも聞くよ?』
『ッ……』

馬鹿じゃないの!?
あんた、八つ当たりされてんだよ?

智司みたいに不機嫌になってみればいいじゃん。
ニコニコしてないでさ。

『ふッ……うぅ……』

そんなんだから嫌だ。

『うわぁぁーッ……!!』

こんな私、嫌だ。
こんな子供みたいに泣いて……
大人なのに……!!

『とりあえず部屋入ろう? ね?』

抱きしめてくれた腕が暖かくて、力強くて……

『大丈夫…… 気の済むまで聞くから……』

言葉が悲しいほど優しくて……

輝の熱で温まったシャツに顔を押し付け、声を押し殺して泣いた。