特に収穫もなかったホストクラブを後にして、家路につく。

剥き出しになった足や腕が寒くて、つい猫背になってしまう。

「なぁに、猫みたいになってんの」

とかなんとか言って現れる。
最近それがパターン化してるから、現れないと妙な違和感がある。

「綾香」「綾香」って……
「好き」「大好き」って……

当たり前になってく輝の存在。
恋愛対象ではないけど、そんな輝は嫌いじゃないなぁ。

可愛くって、憎めないよ。



『何してんの?』

ニマニマしてる私と、すれ違いざまに、男の人が足を止める。

『そんな派手な格好して』

いつもとパターンが違う。

「おかえり、綾香」

輝はもっと、楽しそうに話す。
もっと、嬉しそうな顔をする。

『お前なぁ…… キャバ嬢かっつの』

そんな怪訝(ケゲン)そうな目を向けないで。

『智司こそ…… こんな所で何してるの?』
『俺はお前ん家に向かってたんだけど……』

頭の先からつま先まで、智司の視線は何度も往復を繰り返す。

『でも、今日はやめるわ』
『……え?』
『酒くせーし、香水きついし。 マジでキャバ嬢にでもなったわけ?』

なっ……!!
なにそれ!?

『何でそんな事言われなきゃいけないのよ! ちょっとオシャレしてみただけでしょ!?』

それを臭いとか、きついとか!
何様だっつーの!

『……怒鳴るなよ。 最近の綾香、苛立ってばっかだぞ』
『だ、誰のせいだと!!』

【笑ってよ】

……あ……

【笑った綾香が好きなんだ】

嫌だ。
急に思い出すなんて……

『私……帰るね。 また喧嘩になっちゃいそうだから……』

私、どうかしてる。