「あの人カッコイイなぁ」
「ちょっと好きかも」
今まで、そんな子供みたいな恋愛は沢山あった。
結局どれも偽物で、手に入れたら薄れてしまう。
そんな小さくて脆(モロ)い想い。
【俺と、付き合ってください】
智志が初めてだった。
お互いを好きで恋人になったのも、キスをしたのも。
……エッチしたのも……
だから、智志と別れるなんて想像もつかないし。
別れたくない。
輝や他の人との恋愛なんて、想像も出来ないよ。
『ヒントはないの? あんたの本名当てるための』
真剣な目をして車を走らす横顔に、尋ねる。
『ないよ。 俺、小さい頃の記憶薄いし』
『薄い?』
『住んでた場所とか友達とか。 そーゆうの曖昧なんだよね』
ひひっとバツの悪そうに笑う輝に、思わず言葉を失ってしまった。
そういえば、ブログにもそう書いてあった。
お店のプロフィールも曖昧……
記憶喪失ってやつ?
いや、でも曖昧なだけで忘れてるわけじゃないし。
って事は、輝が口を滑らすって事はないわけだ。
残念だけど。
『もう観念して俺のもんになったら? 俺、気に入ったものは大事にするよ?』
そんな小悪魔な目をすんな。
頬に触れるな。
さすがの私も、罪悪感で苦しい。
『嫌だよ。 絶対にあんたの名前、当ててやるんだから』
痛みを消して。
輝の感触も消して。
キスも言葉もなかった事に……