ゴウンゴウンと音をたて、布団が回る。

はたして、あの鼻血は綺麗に落ちてくれるだろうか。

落ちなかったら……
新しいカバーを買おう。


それにしても輝のやつ。
相当、暇だな。

昨日も今日も家にいるし。

『……生活していけるの?』
『は? 何をいきなり』
『だって、やっぱお店のホストより儲(モウ)からないんでしょ?』

「あー……」と声を漏らしながら苦笑する輝。

あ、もしかして……

『知ってたんだ。 店にいたの』

それ、ふれちゃ駄目だった?

『すぐ辞めたけどねー。 稼ぎは、店のがマジでいいよ』

別に気にするそぶりもなく、笑って話す。

ヤバイなぁ。
私、こんな性格だから、深く突っ込みたくなる。

ネットで同じように噂されてた「咲耶」って人の事とか。
辞めた理由は、そいつが悪いのか。

めちゃめちゃ、気になるんだよね……

『や、やっぱさぁ。 厳しかったり辛かったりした? それで辞めたとか……ない?』

……って、遠回しに聞くつもりが、結構ストレートになってる!?

私、輝の過去を調べまくったみたいじゃん!!

『って言うより、自分に余裕がなくなってくのが嫌だったんだよなぁ』
『……へ?』
『あの狭い箱ん中にいたら、マジで性格歪(ユガ)むような気がして……』

それは、咲耶との事を言ってる?
あんたこそ、遠回しのようで直球だね。

ほんと、笑っちゃうくらい……

『ほら、俺って自己中で気まぐれだし? そうゆうの、疎(ウト)まれてたんだよね』

って、自分で解ってんのかよ、それ。
じゃあ直せよ。
ちょっとくらい努力しなよ。

ネットでも、散々言われてましたからー。

『それにさ、高級ホスクラじゃ絶対に会えない、ガキ達とか魚屋とか八百屋とか…… そーゆうのに出会っちゃったら、もう店には戻れねーよ?』

……ああ、なんだか「してやられた」って気分。

だって、こんな嬉しそうな顔、初めて見たんだもん。

輝のくせに、いい事言うじゃん……