ムカつくムカつくムカつく。
いっつも、えばってばっか。
無神経の冷血人間。

智志なんか、大っ嫌い!

……じゃあ別れろって?

それが出来たら苦労しないっつーの。



『あー、綾香だぁ。 何やってんの? 駐車場なんかで』

と突然、後ろから声がして振り返る。

『ひ……かる…?』

そこには久しぶりに見る、輝の姿があった。

なんてタイミングだろう。
まるで、見計らっていたみたいな……

『ははっ。 なんつー顔してんだよ』
『うるっさいな〜』

好きでこんな顔になったわけじゃないっつーの!

『そんな事より、あんたのカブトムシがうちにいるんだけど!』
『カブトムシ? 俺、カブトムシなんか飼ってないけど』
『前に会った子供が玄関に置いてったの。 あのままじゃ駄目だから、うちの涼しいとこにいるよ』

ちゃんと容器も土もエサもあるんだから。
輝に払ってもらおうと、レシートまであるんだからね!

『マジで? ありがとー、綾香!』

うっわ。
その笑顔反則……
可愛すぎでしょ。

智志との喧嘩の事や、エサ代とかも忘れちゃいそう。
って、忘れるわけないけど…

『今から部屋行くから持ってきてよ』
『あ、うん……って駄目だ!』

部屋には、智志がいるんだった!!
財布も携帯もだし。

『……ってか、お金……貸してくれない?』
『は? 金?』
『うん、あのね。 実は…………