ゼリー、餌箱、土、飼育容器。
智志の進めで買った、補水ジェル。

『ちょ、ヤバイって!! 飛ぶ、飛ぶってば!』
『うっせーなぁ。 そう簡単に飛ばねーっつの』

智志がカブトムシの部屋を完成させるまでの間、カブトムシは床に敷(シ)かれた新聞紙の上。

オスメス、2人が思い思いに動く。
今にも羽根を広げて飛んでいきそうだよ。

『おし、とりあえず入れてみ?』
『え!? 私が?』
『お前のペットだろうが』

う……
不機嫌そう。

ま、せっかくの休みに、こんな事で呼び出した私も悪いんだけど。

はぁーあ……
私だって、こんな虫より美味しいランチでも食べにいきたかったよ。



なーんて。
嘆(ナゲ)いても何も意味ないから、とりあえずキッチンから持ってきた割り箸で虫を飼育容器に移す。

うわぁ。
足がバタバタしてるぅ〜!!

『ワリバシとか酷くね? 一応、生き物なんだけど』
『わ、わかってるよ!』

でも、苦手なもんは苦手なんじゃ!
輝が帰ったら、すぐに押し付けてやるんだから!!

『さて。 暇だし、何かするか』

パチンと容器の蓋を閉め、新聞紙を片付ける智志。

『どうする? 買い物行って飯でも作る?』

珍しー……
智志がこんなふうに言うなんて。

『うん、そうする!』

なんだか嬉しい。
久しぶりに、まともな会話した気がするよ。

ま、カブトムシの話だけど……