ネット内では、好き放題。

「自己中」「気まぐれ」「ちゃらんぽらん」
確かに輝は、そんな奴だよ。

顔くらいしか取り柄ないかもよ?

でも、でも。

子供とドッジしたり。
魚屋と八百屋と仲良しだったり。
老人の荷物持ったり。

そんな奴だったり……

あの輝は嘘なんかじゃない。
だって、輝の周りはいつも、笑顔の人ばっかなんだもん……





『もう3日……』

輝の部屋の前に立つという行動も、もう数え切れない程。

あのネットの中傷を見たせいか、妙に気になってしまう。
無事でいるといいんだけど……


『おねーちゃん』

と、何処からともなく聞こえた声に辺りを見回してみるも、自分の目線の高さには誰もいない。

ってか、この声……子供?

鼻にかけたような、幼さの残る声に目線を落とすと、そこには小さな子供がいた。

『今日は、ドッジできないんだよー? 輝いないもん』

小さな男の子はそう言って、持っていた黄緑の箱を置く。

それは何処からどう見ても、虫カゴに見える。

中は……うわぁ……

『何あんた。 虫捕まえてきたの?』

黒くて光ってて、足がいっぱいで……
私の大嫌いなゴキブリに見える。

『虫じゃないよ! カブトムシだもん』
『へー。 カブトムシ……』

カブトムシも、虫だっつの!

『これ輝にあげるの。 前に輝が欲しいって言ったから』

日当たりのいい玄関前。
輝はいつ帰るかわかんない。

輝が来る前に干からびちゃうんじゃない?
エサだってないし。

それに、ほら。
土とか上り木とかいるんでしょ?
そうなんでしょ!?

『じゃあねー! また輝が帰ってきたらドッジしよーね』
『え、あ、ちょっと!』

こんなん置いてくなっつの!
持って帰れってば〜!!