『今日どうしたの? 仕事は?』

鍵の事で、うっかりしてたけど。
智志がこんな昼間にいるなんて、普通はありえない。

だって、あの中林グループだし。
死ぬほど忙しいでしょ。

『有給休暇。 だいぶ前から出してたから』
『ふーん……』

つか人の質問には、人の目見て答えろっての。

あ、こら。
まだ私も読み終わってない漫画に触るな。

『それ、面白い? 買ったばっかなんだけど』

…………おい。
熱中すんな。




あーあ。
つまんない……


『あ、綾香ー。 お前、隣のやつどんなか知ってる?』

と突然、智志が口に出したのは輝の話。

『さぁ…… 何で?』

やっぱ、さっきの気付かれてたのか?
なんて、少し心配になる。

『前に下で見てさぁ。 どっかで見た事あると思ってたんだよね』
『……どこで?』

気にならないと言えば嘘になる。
それに、ほら。
輝の本名に近付くチャンスかも。

『ビタースイート?ってホスクラ知らね? そこのホストやってたんだよ。 少し前まで』

……ホストクラブ?
デリバリーじゃなくて?

『なんでもナンバー1に近差つめるような奴だったのに、突然辞めたっつー話。 けっこう有名だぜ?』

それを、さらっと聞き流せないのは何故?
1つ1つを気にしてしまう。

そこまで稼いでいるホストなら、今のデリホスに転身する必要ないんじゃない?

だってほら、あんなに暇で気ままな生活してんだもん。
絶対に収入は下がってる。

勿体ないと思っちゃうのは、私だけ?