輝との名前当てゲーム、初日。

そんな事はすっかり忘れ、いつもの一日を送っていた。

求人見て、おやつ食べて、テレビ見て……
ヤバ。
完全にニートじゃん?

『期間従業員……かぁ』

そんなんでも、家でゴロゴロしてるよりマシか。
というか、立派か。

なんて、中林グループの求人見つけて思ってみたりする。

『中林で働くん?』

……へ?

『ひッ 輝!?』

突如、背後に現れた輝に驚き、悲鳴に似た声を上げてしまう。

こいつ…いつの間に。

『中林の社長って、どんな人だろーね。 海外の難民とか、国内の養護施設に寄付しまくってるみたいだし』

輝は私から情報誌を奪うとパラパラとページをめくった。

中林グループの社長なんて、滅多に見れるもんじゃない。

智志も会った事がないらしいし、テレビの取材にも応じない。

今、日本で一番注目されている人物だ。

『……って、そんな事より、何しに来たのよ』
『ふはっ 遅! 今さらかい』

だって、あんたが中林社長の話するから……

『ちょっとねー。 旅立ちの前の挨拶に』

パタンと閉じられた求人情報誌。
その時、生まれた風は、輝のサラサラの前髪を掠(カス)めた。

『挨拶?』

……って一体…

『本当は綾香ともっと遊んでたかったけどね』

大きな手。
私の頭をフワリと包む。

……暖かいなぁ…

『んじゃ、ばいばい』

突き放すように戻っていった手は、そのまま私に向かって横に振れた。
「バイバイ」の手ぶりだ。

何?
一体何なの?