『今日はご苦労様。 ありがとう』

部屋の前まで荷物を運んだ私達に、ペコペコと頭を下げる大家さん。
何度も繰り返す姿が福島土産の※赤べこを思い出させた。
(※つついたりすると首を揺らす赤い牛の人形)


『腕、超いてー! ほら見て』

3階へ向かう階段の途中、輝が真っ赤になった腕を見せてくれた。

『私もだよ! ほら』

袋をぶら下げていた場所は、赤く斑点が……
明日には紫になってそうだなぁ。

『はは、お疲れっ!』

「お疲れ」じゃないっつーの。
あんたが誘ったから、こうなったんでしょ。

『そんな綾香にご褒美だよ〜』

カサカサと袋から出てきたのは、

『オロナミン!?』
『あったり〜! 好きだろ?』

好き好き!
大好き!

ってか、覚えててくれたの?
前に私が喜んだ事……

『輝。 ありがとう』

何か、そーゆうの結構、嬉しかったりする。
ちゃんと話を聞いてくれてたんだなって、安心する。

『可愛ぃー、綾香』

……って、またそれかい。
そーゆう、チャラいのは嫌いなんだっつの。
せっかく見直してやってたのに…

『ねー。 マジで俺の女になんない?』
『……は?』

その展開、意味不明なんですけど。
輝の女になるとか有り得ないって。

『なぁ。 今から部屋まで走って、どっちが早いか競走しよーぜ?』
『競走?』
『俺が勝ったら、綾香は俺のモンになるって事で!』
『は!? ちょッ!!』

言い終わるが早いか、輝は階段を一段おきに走っていく。

ふ、ふざけんじゃねぇー!!!!