遊園地といえば、ジーンズが定番だよね。
Tシャツとキャップでカジュアルな感じに……
うん。
何のアトラクションでも乗りやすそうだ。
『おはよ、綾香』
身仕度を整え、荷物を点検する私の背後から聞こえる声。
『またベランダから入ってきたの!? 落ちても知らないんだからね』
何で玄関から来ないんだろう。
鍵なんて閉まってないのに。
『この、俺の寝室から綾香の寝室にダイレクトってのがツボなんだよね』
……変態か。
『最近なんか、ベランダに靴箱を置こうかと思ってるくらい』
『いや、意味わかんないから』
何でこんな変わり者を好きになっちゃったんだろう、って今さら思う。
個性的すぎだよ……
『それより、何か用なんじゃないの?』
気を取り直して、輝が現れた理由を尋ねる。
『うん? 単純に綾香を迎えに来ただけだよ?』
そう言って笑う輝に、なんだか胸がほんわり暖かい。
こういうのを愛されてるって言うのかな?
『一緒に玄関出るってのもいいだろ?』
それって、何だか……
『一緒に住んでるみたいな気分になんじゃん?』
うん、そうだよ。
私もそう思った。
まるで、同棲してるみたいって……
『さ、行こっか』
輝の無邪気な笑顔につられるようにして、玄関を出る。
今考えたら、これって初デートだよね?
手を繋いだり腕を組んだり……
もしかしたらキスだってするかも!?
『あ、靴履いてねーわ』
……は?
『内側から鍵かかってるしなぁ……』
『ど、どういう事?』
『ベランダから戻って靴履いてくるから、ここで待ってて』
え? は?
何やってんのこの人!
わけわかんないんだけど!!
つか、自分ん家の鍵持ってないの?
まさか、帰りも私ん家からベランダ使うつもり!?
『あ……有り得ない……』