『うん。 いい天気』
あれから早くも一週間が経ってしまった。
特に変わった事はなく、輝と私の関係も大きな進展はない。
『あーやかっ』
布団をベランダに出す私に、どこからともなく呼びかける声がする。
『輝!』
ようやく輝の姿を確認。
どうやら、真下の駐輪場から呼んでいたようだ。
『すぐ行くから、そこで待ってろよ!』
何かいい事でもあったんだろうか。
話したくて仕方ない子供みたいに階段を駆け上がる姿が見える。
ほんの数分後、隣のベランダに奴が現れた。
『今週5位だったんだ』
『5位?』
『うん。 もっとがた落ちすると思ってたのに』
あぁ。
デリホスの売上の話か。
1位と2位を行ったり来たりだったのに勿体ない……
ネット内でそんなコメントが多いらしいけど、今の輝はイキイキとしてる。
背負ってた重しがなくなったって感じ?
前よりも、もっと自由になったみたいだ。
『5位なら小さいけど写真も載るし、維持してかなきゃな』
シシシッと無邪気に笑う笑顔は、本当の輝の笑顔。
作り物じゃない、本物の輝だ。
『ってか、本当に続けてていいの? 俺、綾香が嫌なら違う仕事でも』
『いーの。 何度も聞かないでよ』
この一週間で数え切れないくらい聞かれたよ。
確かにお客さんとエッチな事されたら嫌だけど……
もう、それはしないって約束してくれたから。
『輝が楽しいならいいの。 ってか、輝がサラリーマンとか想像出来ないよ』
スーツに七三。
営業鞄とか、とにかく似合わない。
出会った時のままでいてほしい。
世間で褒められるような職業じゃないとしても、私が好きになった輝のままでいてくれたら、それだけでいいんだよ……