『……で?』

突然言われた言葉。

『で?って言われても……』

何が聞きたいのかサッパリ。

『昨日は、どこに行ってた?』

輝は当たり前のようにカップにコーヒーを入れ、ベッドに座る。

『名古屋…… ってか私のカップだし、私が飲むために作ったコーヒーだし』
『名古屋ねぇー』

つか、聞いてないし……

『名古屋って事は、調べに行ってきたんだ。 俺の事』

楽しそうに笑うから、うっかり喋ってしまいそうになる。

輝のフルネームや、お父さんの事……

話さないって決めたのに。

『輝さぁ、私がゲームに負けたらどうすんの?』
『うん? どうされたい?』

どうもされたくないから聞いてんだよ。
無事にゲームを終われるか心配だから。

『今から、「降参」って言ったら……?』

恐る恐る伺(ウカガ)うように顔を見る。

少し驚いたような顔をしていたけど、すぐにその表情は消える。

『降参したいの?』

あまり見ない、無表情の輝。
何だか目を見るのが恐かった。

『好きで降参するわけじゃないんだけど……』
『じゃあ―……
『だって答えが見つかんないんだもん。 名古屋だって無駄だったし』

堂々と嘘をつくのが、こんなに難しいなんて初めて知った。

真っ直ぐに前を向けない。
どうしても、部屋の角ばかり見ちゃうよ。

『降参なら、いいんだよね?』
『え……?』

輝が静かに笑う。
私をあざ笑うように……

『今すぐここで、喰っちゃっても』

喰う?
それって一体……