アパートに帰れたのは日付がかわる頃。

疲れたせいで死んだように眠ってしまい、気付けば次の日の昼過ぎになっていた。

【輝が大切だから】

そう言ってゲームを諦めた咲耶。
嘘をついてでも隠し通してきた大人達。

こうして輝は守られてきた。

心ない人達や、私欲のために手段を選ばないマスコミ達から……

「君は、一人じゃないんだよ」
そう言ってあげれたら、どんなに楽な事だろう。

「こんなに沢山の人が、輝を想ってるんだよ」

きっと、とても喜ぶだろう……









《ガチャガチャ、カチャン……》

夕方になって、うたた寝していると、隣の部屋から金属が摩れるような物音がした。

あぁ、輝が帰ってきたんだ。

そういえば2、3日顔を見てない。
あの風邪以来かな。

ちゃんと治ったかな?
ぶり返したりしてないかな?

そんな事を考えながら、意味もなく部屋をウロウロしてみる。

別にいつも通り、声かければいいんだけど……
何となく顔が見づらくて……

でも咲耶に言った通り、顔を見て安心したいのも確かだ。

見たいけど、見たくない。
そんな複雑な気持ち。


『ウロウロうるせーんだけど』

と突然、ベランダから聞こえる声にハッとする。

『相変わらず、体力有り余ってんねぇ』

なんて言って笑うのは、いつものアイツだ。

『つっても、昨日は死んだように眠ってたみたいだけど』
『……は!?』

まさか見にきたの!?
夜中に、人の部屋に勝手に!?

『だらしなく足広げちゃってさぁ。 100年の恋も冷めるってやつ』

あ、足ぃ!?
広げって……

最低、最悪、超最悪!!

『う……訴えてやるんだからぁ!!』

こんな奴、心配して損したよ!!