【輝を傷付けたくないから】
そう言って笑った咲耶。
このゲームに終わりがあるんだろうか。
急にそう不安になった。
私が答えを見つけたとしても、咲耶と同じ事を思ったとしたら……
また、他の誰かとゲームが始まるのかな。
私は、輝に答えを言えるのかな。
言えないとしたら、その理由は?
全てが謎のまま、時間は勝手に最終日に近づいていく。
『あと2週間……』
たいした収穫もないのに、半月も過ぎてしまった。
「たいようの家」「咲耶」
2つのキーワードを手に入れたけど、2つ共が行き止まり。
完全にお手上げだよ。
『カブトムシって子供産んだら死ぬんだって』
日曜の昼下がり。
大きな飼育容器を見ながら輝が呟いた。
つか、ベランダから話しかけるなっつの……
『なんなの、いきなり…… あのカブトムシ死んじゃったの?』
飼育容器の中は空っぽ。
何も動いてないし、何も入ってない。
『少し前にオスが死んで、今回はメス。 そしたら、ほら……』
優しい手つきで掘られていく土に目を見張ると、中から小さな小さな……
『幼虫!?』
本当に小さな命。
『あっという間に終わる命は、こいつのためにあるんだよ』
いつになく真剣な顔。
興味もないカブトムシの話だけど、つい聴き入っちゃう。
『同じように自分も子供を産むまでの1年。 こいつは誰にも頼らず、1人で生きていくんだ』
カブトムシの話がまるで、輝の話のように聞こえたからかも知れない。
親の顔も知らないで、1人で生きていく……
それはもう、私の中の輝のイメージそのものだった。
寂しく、孤独な幼虫。
何を思いながら大人になるんだろう……