どれだけ喧嘩しても、どんなに怒っても、時間が経てば何食わぬ顔で現れた。
「ごめんね」の代わりに体を重ねて、それで解決した気になってた。
全然、解決してないのに……
だからまた繰り返す。
同じ事で、また争うんだ……
でも、もうこれでおしまい。
前に進むんだ。
智志を忘れるんだ……
『そうか、そうか。 名古屋は無駄だったか』
ホストクラブ、BitterSweet。
もうすっかり馴染みの店になってしまった。
まぁ、烏龍茶しか頼んでないけど……
『無駄だったわけじゃないけど…… 輝の子供の頃の話も聞けたし』
『そこまで聞けて、何で名前聞けないの』
咲耶は呆れたように言って、グラスの烏龍茶を飲み干した。
『聞けなかったんじゃなくて教えてくれなかったんだもん! 輝にしか教えられないって』
あの時はそれにムカついたけど、冷静に考えてみたら、当たり前だもの。
私だって、自分の知らない所で自分の話されてたら嫌だし。
教えてくれなくて当たり前……
だから、名前を知る方法は2つ。
輝を名古屋に連れていくか、
咲耶から聞き出すか……
まず、輝が協力してくれるなんて事は有り得ないわけだから、頼るのはコイツってわけ!
『あんたが私に協力してくれたら、こんな無駄足しなくてよかったんだけどなぁー?』
なんて、さりげなくアピール。
だってだって、
輝の名前知ってんでしょ?
『やっぱ親友には、あんな馬鹿げたゲームしてほしくないよね?』
輝のために……ってか私のために暴露(バクロ)しちゃってよ。
ほらほら、早くぅ。
『ははっ、おめでたいな君は』
と、突然に笑い出す咲耶。
「おめでたい」の意味がわからなくて唖然としていると、言葉が続いた。
『輝を親友だと思った事なんて、一度もないよ』
……え?
『輝も、僕を同じように思ってるはずさ。 だから逃げるようにココから姿を消した』
不敵な笑みに垣間見える辛そうな顔……
眉間のシワが深くなってく。
『誰かを大切にするとか、愛するとか…… そういう感情に欠けてるんだよ、輝は』
咲耶の言葉がよく解らなくて、なんだか頭が痛くなった……