「ネコ、今日は仕事が入ってたぞ」


 冬我の言葉に、『ネコ』と呼ばれたその男はカップの中の茶色い液体に視線を落としたまま、反応を示さない。


 冬我はパソコンのメール画面に視線をむけたまま、

「見ねぇのか?」

 と聞く。


 巻き舌を使う口調が、まるでヤクザのようだ。


 ネコは汗にまみれたTシャツをベッドの上に脱ぎ捨て、そのままシャワールームへと向かう。


 どうやら、『見ない』という返事らしい。


 パソコンの画面にうつったネコの後ろ姿を目で追い、冬我は軽く息を吐き出した。