「雨じゃん? 濡れるからぁ……雨宿りくらいしてけばぁ……?」


 そう言い終わるやいなや、強い力で藤堂を引っ張って店の奥へと進んでいく。


「ちょっと、何なんだ」


 手を振り解こうとする藤堂に、青年はニッと歯を除かせて笑い、「俺の名前はルカ」と突然自己紹介をしたかと思えば、まるで恋人へ甘えるように上目使いで「部屋……来て?」と言った。


 やけに水分の多いうるんだ瞳に藤堂は何も言えなくなり、ルカの言うとおり部屋へと連れて行かれたのだった……。