興味深そうな返事をする新田に、幸也はニヤリとした笑みをみせた。


「父さんは、今から10年前の事件を覚えている?」


「10年前?」


「あぁ。戸部奈々子が殺された事件」


「戸部奈々子……」


 その名前に新田は眉間にシワを寄せて考え込んだ。


 今まで何十件という殺人事件を関わってきた。


 その中から一つの事件の記憶を掘り起こすことは簡単ではない。