「いい気はしないよ。けど山は危ない」


『いい気はしない』連中の心配をするなんて、やっぱり優しい。


 そう思い、沙耶香は軽く微笑んだ。


「連絡取ってみたら?」


「え?」


「連絡。携帯持ってるだろ?」


 そう言われて、沙耶香は軽く首をふった。


「ないの。昨日の山で落としちゃって」


 と、そこまで言って口を閉じた。


 それ上の事を言うのは何だか気がひけたのだ。


 栗田を妙な事件に巻き込みたくはない。