「本当に、そんな雰囲気だったのか?」


「そうだ。俺の存在に気付かなければキスしていたかもな」


「キス……? それはなお更おかしいだろう」


 その言葉に、ネコは幸也を見る。


「飯田昌代が殺された現場で、キスなんかするか? いくらなんでも、おかしいだろ」


「それを言い直すと、飯田紗耶香がおかしいって事だな」


 飯田紗耶香……。


 ネコと幸也は目を見交わせ、そして同時に立ち上がった。


 幸也は勢いをつけて、ネコはよっこらせ、とため息をつきつつ。


「行こう」