「バックはやらないの?」

「人にぶつかっちゃうよ」

ああ、そうか。背泳ぎって、前が見えないもんね。

紳君の平泳ぎはフォームがとてもきれいだった。

「さすがにヒラも上手ね?」

「そうか? 適当にやってるだけなんだけど?」

「適当には見えないよ。フォームが綺麗だもん」

「じゃあさ、勝負しない?」

「勝負?」

「ああ。縦に端から端まで、ヒラで50。人にぶつからないように泳ぐのは大変だけどな」

「面白そうだね。いいよ」

「よし。手加減すんなよ?」

「うん」