「マジで?」

「うん」

「すげえ…」

「一瞬だけだよ。すぐに抜かれちゃったんだ…」

「いや、一瞬でもすげえよ。何でやめちゃったんだ?」

「あの時が私のピークだったの。その後はどんなに練習してもタイムが伸びなくて…。もう限界なんだなって、1年の時にきっぱり諦めちゃった」

「そっか。残念だったな?」

「うん。紳君は? 何で水泳部に入らないの?」

「え? 俺もタイムが伸びないからさ。俺の場合、ピークもなかったけどな。要するに才能がないんだよ」

「そうかなあ…」

実際のところは、私にはもちろん分からない。ただ、紳君が辛そうなのは分かった。