「どうせ駅まで同じなんだし、一緒に帰ろうよ、恵子ちゃん」

歩き出した私の横に田中君はピタッとくっつき、わざと顔を寄せて来た。

「杉下です。あまり近くに来ないで」

そう言って私が少し横に避けた。

「夜道の女の独り歩きは危ねえしさ」

まだ夜じゃないし、アンタといる方がよっぽど危険だわ、と思ったけど、さすがにそこまでは言えないし、面倒なので「ご勝手に」と言い、不本意だけど田中君と並んで駅までの道を足速に歩いた。

田中君は、自分はアイドルの誰々に似てるとか、どうでもいい話をし、私は適当に受け流していた。