目を凝らして中庭を見ていたら、いつものようにバッグを肩に担ぎ、ゆっくり歩いて来る紳君を見つけた。

私は、反射的にテーブルの鞄に手を伸ばしかけたが、途中でその手を止めていた。

何? 誰?

紳君は、大体は小林君や田中君といった、男子の友達と一緒にいたんだけど、今日は一人の女子と並んで歩いていた。

その子には見覚えがないので、たぶん1年生だと思う。

ショートの黒髪は、まだ生乾きみたい。たぶん女の子も水泳部で、紳君と帰るために慌てて更衣室を飛び出して来たんだろうなと想像した。

夏休みに、プールに通っていた時の私も、そうだったから。