紳君を待ち伏せする場所は図書室。

窓際に座ると、そこから中庭が見渡せるから。

夕方になり、薄暗くなりかけた頃、私は勉強道具を鞄に仕舞い、中庭を注意深く見る。

考えてみれば私、このところよく勉強をしていると思う。
夏休み中は篠原家のキッチンで。今はこうして図書室で。

紳君を追い掛けるためという、動機は不純だけれど、それがなかったら、そんなには勉強しなかったんじゃないかなあ。
言ってみれば、”紳君効果”じゃないかなと思う。


中庭を、部活が終わって帰る人達がぽつぽつ現れて来た。

そろそろだよね…。紳君、早く来ないかなあ。