嫌だなあ、と思っていたら、紳君が苦笑いしながら私に近付いて来た。

「さすがだな?」

「え? あはは」

何て返していいか分からなくて、笑ってごまかしちゃった。

「前半は抑えたんだろ?」

「うん。ずっと練習してないから、前半から飛ばすと後半はバテると思って…」

「そっか。意外とバカじゃないんだな」

「ば、バカってなによ!」

『意外』って事は、紳君は私の事、バカだと思ってたわけ?
ショックだなあ…

「そんなに脹れんなよ。可愛い顔が台無しだぞ」

そう言って、紳君は私のほっぺを指でツンと押した。