腕と足にぐっと力を入れる。

手の平に、そして足の裏に、確かに水を押す感覚が伝わって来た。

腕をスーッと伸ばした時、水を切り裂くような感覚。
足を蹴った時、後ろから誰かにドンと押されたような感覚。

体を浮かせた時、まるで水面を跳びはねるような感覚…

これは…かつて県の新記録を出した時と同じ感覚だ。



ゴールのタッチをし、横を見たら紳君はいなかった。

え? と思ったら、少し遅れて紳君がゴールした。
いつの間にか、紳君を抜いてしまったらしい。

紳君、また機嫌を悪くするんだろうなあ…