風が吹けばザワザワと笹林が揺れ、木漏れ日がゆらゆらと揺れて見えた。そして細長い葉がゆっくりと寄り道をしながら降りてきた。

たくさん落ちてくるのに、手で掴もうとすると方向を変えて逃げてしまう。でも手のひらを開いてジッと待っていると、いつの間にか一枚の笹の葉が乗っていた。

私は木漏れ日の刺す青々とした笹林を見て、思わず深呼吸をした。

笹林は夏の生い茂る緑を感じる香りも勢いもある植物ではないかもしれない。けれど私は自然が作り出した静かで何もない、そしてゆっくりと時が過ぎ去るこの感覚が気持ちを落ち着かせているような気がした。

私と優子はゆっくりと道沿いに歩き始めた。

その道には笹の葉が落ちてはおらず、まるで誰かが葉を拾っているかのようだった。

「あの、何か聞こえませんか?」

隣にいた優子に言われると、私は立ち止まって耳をすませた。

すると笹が揺れる音に混じって、鈴のような音が聞こえてきた。

さらに笹林の奥へと進むと、その音色は徐々に瓶やグラスを叩く音へと変化した。

私は周囲を見渡すと、笹林の奥の方に、小さな風鈴が飾られているのを見つけた。

「ここには誰かが住んでいるのかもな」

私と優子はあたりを見回し、他にも薄いガラスでできた風鈴を見つけた。

間違いなくこの付近には誰かが住んでいた。

しかし笹林しか見あたらないこの場所で、何をして暮らしているのか、私には全く検討もつかなかった。

再び歩き始めると、笹林に飾られるものは、オルゴール、ウィンドチャイム、絵画、彫り物と徐々に種類が豊富になってきた。