なんだかほわほわする。

いまなら飛べそうだ。

真っ黒な友達が持っているふかふかがなくったって、飛べるんだぞっ。



「んー‥ほぃっ!」



たたたっと走って勢いよくジャンプしてみた。



「飛んだぁ♪」



すると、まるでぼくにもあのふかふかがあるかのように、ふわりと身体が浮き上がった。



「うふふ。ねぇみてるー?ぼく、飛んでるよー♪」



真っ白な光の中、フワフワと飛んでいるぼく。

声がぼわんぼわんと辺りに響くけど、ぼくの声に反応するものはない。





「‥だぁれもいない」





そう、だれもいない。

ただただ白い空間が広がるばかり。


くるーりくるくると身体を回しながら、飛んでいることを思う存分に楽しんだ。



「あり?」



どっちが上でどっちが下だか、まったく分かんなくなった。



「んー‥ん?」



その時ぼくの目の前に、頭を垂れる白い花が見えたんだ。



「ぼく、きみを知ってるよ。妖精さんのはちみつ入れだよね♪」



下向きにたくさんついている白くて小さな花は、妖精さんが使うんだ。

お母さんが教えてくれたんだ。



「どうして、そこに居るの?」



そう話しかけた時ーー‥



「うわーっ」



ものすごい風にひゅるひゅると飛ばされた。



「わー。びっくりした」



目をこすりながら、ゆっくり前を見ると‥



「わぁ‥キレイ‥」



一面に広がるお花畑。
すごくすごくキレイだった。

ぼくはそこに足を踏み入れようと、前足を上げる。


するとーー‥



『坊やっ』



空から声が聞こえたんだ。



『おいてめぇ、起きろっ』



聞いたことのある声。



『あんた、あんたっ!起きなさいなっ』



それは、次から次へと降ってくる。



「ーー‥なんだろ?」