ぽよぽよしたそれは、
コロコロ近づいてくる。

滲んで霞んだぼくの瞳には、それが誰なのかわからなかった。



「きみは‥だれ?」



だんだんと大きくなるそれに話しかけてみたけれど、応えてはくれなかった。



「ねぇ‥ぼくの、こえ‥きこえて、る?」



なんだろ?
声が出なくなってきた。


「まんまる‥だぁ」



ぽんぽんと跳ねるそれは、キレイなまんまる。



「もしかしてきみ‥まんまるくん、なの?」



笑い始めた元気な光を浴びて、いつもとは違う黄色い光を放つそれ。

ぽよぽよと『うん』って返事をしているみたいだった。



「うふふ。やっぱり、ぽよんぽよんしてるんだね」



ぼくの目の前まで来た、ぼくと同じくらいの大きさのそれ。

触りたい。



「う、う‥」



手が、動かないよ。



「まんまる‥くん」



会いに来てくれたんだ。

食べられちゃったわけじゃないんだ。



「良かったぁ‥」



ただ、お出かけしてただけなんだよね?



「まんまる‥くん、あのね、」



ぼくは一生懸命、手を伸ばしたんだ。


もうちょっと。
もうちょっと。


まんまるくんの手をとって、ごめんねって、泣いてごめんねって言うんだ。

そして、これからもぼくたちは友達だよって。




もうちょっと。
もうちょっと。





この時、爪を出せば良かったんだ。

そうしたら、届いたかもしれないのにーー‥。





刹那、


横から眩しい光が射し込んで、ものすごい速さでこちらへ来る。





プップーーっっ!!


ーーーーードンっ






元気に笑い始めた光は、もうその姿を全部見せていた。


みんながそろそろ目覚める頃。


ぼくは

まんまるくんの隣で

輝きを失い欠けた流れ星に


ーーー‥ぶつかった。