「君の腕に当主の証が刻まれていたのを見たその瞬間、彼は思ってしまったそうだ。自分が運命を受け入れ犠牲になる事には耐えられる。しかし愛しい息子さえも、自分と同じ運命を辿らなければならない事実に……彼の心は揺れた。そして決断したんだ」

「……巫女を外の世界へ逃がす」

震える声でそう呟くと、父は悲しそうに笑って小さく頷いて返した。

「そう巫女が死ねば当主も死ぬ。すなわち巫女が生き延びれば当主も生き長らえる事ができる。結界から巫女を遠ざければ……愛しい息子を守る事が出来るとね」

「……親父が」

火伏さんはそう呟くと、切なそうに瞳を揺らす。