「今、席の準備をしますね」

「……は、はぁ」

優しく微笑む彼に気の抜けた返事を返すと、横に立っていた火伏さんはポリポリと頭を掻いて小さく息を吐いた。

「じゃ、後は任せた」

そう言って火伏さんは手を上げると、真っ直ぐに私を見つめた。

「俺は弐ノ赤組に居る。何か困った事があったらそこに来い。あ、それと、帰りに迎えに来るから勝手に帰るなよ!……じゃあな!」

彼はそれだけ言うとそのまま廊下の先に消えて行った。

そっと教室を振り返ると、クラスの生徒達の視線が私に突き刺さる。

皆はまるで珍獣でも見るかの様な瞳で私を見つめていた。