『…で暴徒化した市民によるテロが相次ぎ…』


「物騒ねえ」

朝食のパンをちぎっていると母が腕を組んでテレビを見ながら呟いた。

そこには男たちが棒やら何やらを手に持ち暴動を起こした様子が映っている。


悲惨な状況だ。



『この暴動による死者は5人で、8人の負傷者が出ております』


画面はスタジオへと切り替わり、アナウンサーが淡々と原稿を読みあげ、芸能ニュースの話題に移った。



「あ、そう言えば碧衣、今日お父さん帰ってくるそうよ」

母が笑顔を向けながら言った。

「ほんとう?!」

お父さんが帰ってくる。久しぶりにまた会えるんだ!何となく落ち込んでいた気分が高揚する。



碧衣の父―壮一はずっと海外で仕事をしていた。IT企業の社長であり、グローバル社会となった今、外国への進出は不可欠なのだろう。

その壮一のおかげで母の佑香と碧衣が裕福な暮らしができているのも事実だ。


しかし会えないのはやはり寂しかった。