その間もずっと

「嬉しいだろッ?嬉しいんだろッ?」

って大樹がうるさい

はいはいと流しながら教室に入る
黒板には

“ご入学おめでとうございます”

と大きく書かれていて
その下には座席表が張り出されていた

俺はやっぱり一番前

ただ窓際なのが嬉しい
窓の外には今歩ってきた校門前の桜並木が見えた

高台にあるせいか車の通りも少なく
ただ静かに桜が風ですれる音が聞こえる

俺は席について周りを見渡す


大樹は名字が瀬戸だから
真ん中辺りの席

もうすでに近くにいた数人のクラスメイトに話しかけている

亜希は山城だから
俺と正反対に一番端の一番後ろ

前の席の女子と少し緊張気味に話してる

俺に気付いて手を振る
俺は少しだけ頷いた

ふと亜希の後ろ
出入り口に目がいった

きっと周りの奴等もそうだ

静かなざわめき


ミルクティー


そんな髪色の女の子が
ちょうど教室に入ってくるところだった

その明るすぎる髪は
都会ならありえるかもしれないが
田舎の中学生である俺達からしたら
衝撃

好奇の対象でしかない



その子はうつ向いたまま
足早に教室を歩き
真ん中の列一番前に腰を下ろした

黒板を見上げる
彼女の座ったソコに白いチョークで書かれた名前


高山 澪

たかやま…なんだ?

俺は別に頭いい訳じゃないから
よくわからなかったけど
他人の名前にはたいして興味もないやと
机に伏せて目を閉じた