東京都の三分の二ほどの敷地を持つ、アルカネット学園。

学園自体は日本にあるのだが、生徒に関しては日本人が少ない程である。

シェルリアは正真正銘、生粋の外国人。

美しさはフランス人形にも勝ると言われており、『生きたフランス人形』と言う座右の銘を持つほどである。

時雨は日常会話に七ヶ国語を織り成す生粋の日本人。

座右の銘は『フランス人形の騎士』。

これは、人を寄せつけない『生きたフランス人形』であるシェルリアの唯一の友達であり、また、良き理解者であるからだ。

シェルリアが心を許した者は、時雨以外には実の姉だけだとも言われている。

気付けばシェルリアの住家でもある『時計塔・大図書館』に着いていた。

「よし!今日はピーチティーにしよう。そうと決まれば準備だ。
シェルリア!カップを出して」

シェルリアはあえてなにも答えず、
―――指を小さく動かすだけで、カップを棚から出して洗う。

時雨はそれをみて笑い、
―――口で何かを唱え、紅茶セット一式を目の前に出し、火も使わずにお湯を沸かした。