あれから5年が経つ。結局カツオは私を迎えに来なかったし、私が彼の元へ行くこともなかった。
結論から言えば、カツオと私は運命の赤いワイヤーでは繋がってなかったのだ。
そして私は、カツオじゃない男性を心から愛し、傍にいる事を選んだ。
「緊張してる?」
白いドレスを纏い、式場を見つめる私に、綺麗なイギリス英語が聞こえてくる。そこには今からともに式を挙げる伴侶の姿があった。
「あなたと一緒になることに緊張する理由がある?」
自然と身についてしまったイギリス英語で私がそう返すと、彼は微笑みながら私を優しく抱きしめた。
「すてきな式になるね。君の上司はセンスがいい」
式場を見渡す彼。マナーハウスの庭に設けられた式場のゲートは様々な色の風船で飾られ、ゲストの座る椅子には綺麗な色の花がリボンで束ね飾られ、文字通り花を添えている。飾りつけは店長が買って出てくれた。
店長は今でもずっと私の良き理解者でいてくれる。
あの日、飛行機の中で人目も憚らずに大泣きする私を諌める事もせずにずっと泣かせておいてくれた。
「あなたはきっと、もっと自分に我儘になっていいんだと思うわ」
暖かいココアを私の前に置き、綺麗に微笑んだ店長は、お姉さんのような親友のような、優しい声で私にそう言って、落ち着きかけた私をまた泣かせた。そんな彼女は今日の事も自分の事のようにとても喜んでくれている。
「式の事は任せて。花沢さんも大満足の幸せな式にするから、注文があったら言ってね」
店長の一言に私はすっかり甘えて、今日の事はなにもかも店長に任せてしまっている。