私の職場は有名なアパレル店だ。

 上品なお客様の多いそこは洋服がメインだが和装も扱っており、和裁と着付けが出来てお客様への応対も無難にこなせる私は専門学校卒業の売り子にしてはなかなかいいお給料を頂いている。

「結構浴衣が売れてるわね」

 私が裏でお客様から受けた浴衣の肩上げをしていると、店長が売り上げのチェックをしながら私に声をかけてきた。

「季節柄ですかね」と私も手を止めて、お直しの注文を受けた服の置いてある方を見る。ちらほらと浴衣がある。全て私の担当だ。

「もう少し発注かけた方がいいかしら?」

 店長はその綺麗な目をこちらに向けた。ありがたいことに店長は私を頼りにしていてくれるらしかった。和装に関しては特に。私は独りよがりにならないように多角的に考え、きちんと返事をする。頼りにされた相手への礼儀だ。
 こんな風に店長と店の話をするのは面白い。店長も頼りになる人だから尚更だ。

 そんなふうに忙しく働いていると上がる時間になった。バイトの女の子に「花沢さん久々に今日は早いですね」と言われたのでたまにはカツオの働いてるところでも見に行くことにした。