毎朝のことである。

逃げるように、通学カバンを持って家を出る。

着ているのは、赤いリボンが目立つ真っ黒いセーラー服。
三つ折りのソックスと、指定の地味なローファー。
スカートは、指定よりも長い膝下丈のもの。

長く厚い前髪は湿気で額にはりつく。
重く、背中の半ばほどまで伸びた黒髪は、
艶こそあるものの「伸ばしっぱなし」の感が
否めない。そして、質素なヘアゴムでふたつにくくられていた。


表情は読めない。大きく厚い眼鏡が顔を覆っているからだ。


野暮ったい、わかりやすい言い方をすれば
「ダサい」彼女は、またまた全時代的なこうもり傘
をさしてうつむき、早足で歩く。

家から4つめの角を曲がって、勇気を出して
そのコンビニを見る。

「間に合った…」

急ぎ足で店内に入り、メールに書いてあったものを買う。
店の外を見るが、雨が降り続くだけで人影はない。
ファッション誌のコーナーをちらりと見る。

―あの雑誌、新刊でてる

手にとりたかったが、財布の中身を考えてぐっと我慢した。

なにより、あんなもの自分にはもったいない…


「アーオーミードーロっ!」




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