「どうしたの?」

「ん?いや、靴の中に画鋲が入ってただけ。」


美雪は黙って画鋲を取り出し始めた。


「さ、慎くん。帰ろ。」


顔を上げた美雪を見て、僕は少し恐怖を感じた。


「あ、あぁ。」


なぜなら、うっすらと笑った美雪の顔が“無”だったから。

何も感じてない、機械みたいな顔。

それと、いつもきれいに澄んでいる茶色い目が、真っ黒な闇に染まっていた。

・・・こんな美雪は見たくない。