暗い…
電灯もなく、暗闇に包まれた室内で、俺はゆっくり目を閉じる。
さらなる暗闇に入るために。
ここはどこだ…
俺は誰だ…
俺は自身の心に何度も問いかけ続ける。
しかし、俺の心はどこもかしこも暗闇で明確な答えなど与えてくれるはずもない。
俺はそんな虚無に疲れ、静かに目を開ける。
「いいさ。わかってる。」
俺は誰もいない室内で呟く。
「人は退屈だ。俺も他人も。生きていても、幸せに溺れ、何もなそうとしない。」
「………。そうだろ。一樹(かずき)。」
俺は死んだ双子の弟に言葉を向ける。
「聞こえねぇか……。」
俺は暗闇の中、眠りにつく。
やがて、夜が明ける。
窓からさす、光の眩しさに俺は目を覚ました。
「痛…」
体を動かせば、節々に痛みがはしる。
俺はゆっくり立ち上がり、自分の顔を鏡で見た。
唇の下にできた大きなアザ。
俺は、そのアザを右手で触る。
「痛い。でも悪い気はしない…」
俺は部屋にかけていた学ランに袖を通す。
学ランのボタンはとめず、髪にワックスを付け、オ−ルバックにする。
香水は付けない。
香水は男が使うものじゃないから。
俺は家を出て、学校に向かう。
通学路を楽しくお喋りする同級生達の中、一人ポケットに手を突っ込み、睨みをきかせながら…。
やがて、俺の前の人混みが十戒のように開けて行く。
これは俺の睨みと風評を受けてのものだろう。
俺は、俺を見て小声で話しをする人混みの中、その道をゆっくり歩いていく。
俺は思う。
<人は一人だ。俺もこいつらも。