ゆっくり振り向く彼の右手にはまだ若草色の萌木が握られている。

そして

「あ、白川さん。どうしたの?」

と何もなかったかのように私を階段下から見上げた。

「あ、あの。あの……さっきの。ごめんなさいって言うか……」

うん、と中山君は頷き左手を軽く上げ

「白川さん、ごめん。僕、今泣いちゃいそうなんだ。だから、ごめんね?」

と私の話しを遮る。

「でも……」

中山君は私の声なんて聞えないかのように、くるりと背を向けた。