「あ……」

急いで顔を上げると恵美がすぐ横に立ち、萌木を覗き込んでいた。

「あ……おか、おかえり」

「うん。ただいま。で、だから、何これ?」

はっきりとした口調で首を傾げる恵美。

どうしよう?

話すべき?隠すべき?誤魔化すべき?

でも……ああ!

頭が混乱する。

中山君の『極秘だよ』が頭の中でリフレインする。

でも恵美なら……。

でも『極秘』。

「あ、うんと……えっと……」

ん?と私を覗き込んだ恵美はしばらく私を見つめた。

そして

「ん、別に……ホントたいしたモンじゃないし──」

と言う私の言葉を遮った。

「ん。話したくないみたいだし。もういいって。別に無理しなくていいよ」

恵美はそう言って私の髪を撫でると自分の席に向かって行ってしまった。