「広瀬、お前空気読めよ~」

「あ?それ中山だけには言われたくない」

メッシュの男は笑いながら『ちょっとコイツ借りるよ?』と私を見て、それから『んでよぉ?』と中山君の肩をガッチリ掴んで、落書きの多くなる普通クラスへと続く階段に足を向ける。

その後ろ姿を見送ってから私は逆方向にある特進クラスに続く階段を登っていく。真っ白い壁のあるクラスへ向かう。

私の気持ちが茶髪だけで揺れたわけではないけれど。

それを一生懸命考えてくれて、ああいう不器用な言葉を紡ぐ中山君を初めて素敵だと感じた。