あんな事があったから、気まずくなっていくんだろうな、って思っていた私。

でも翌朝、珍しく下駄箱で顔を合わせた中山君は普通に『おはよ』と笑った。

「白川さん、あのさ……髪、それも可愛いって思う。ただ、僕は白川さんの黒髪も好きって意味で。だから……」

朝日に金色に輝く頭をポリポリかく中山君の一生懸命の言葉を一言一句聞き漏らさないように、彼を凝視した。

でも人生はタイミングで。

昇降口に飛び込んできたモスグリーンのメッシュの入った男の子が

『お?中山がこんなトコにいるなんてに珍しくねぇ?っておい、昨日の晴海先輩の……」

なんて話し出してしまい。

確かに中山君との間には会話するには2メートル以上の距離があり、その間にはゴミ箱もあり。傍からみれば私達、会話してるようには見えない立ち位置で。

『またね』と口だけ動かして、軽く手を振った。