油絵の具の重厚な匂いに包まれるように、小さな白いメモがあった。

“白川さん、ごめんね。白馬の王子より”

その上にはさっきの飴。中山君が『こっちは僕の』と言っていた緑の飴。

誰が『白馬の王子』だって?

こんな匂いの中に置いたら、飴に油の匂い移っちゃうでしょうが。

よく見れば開けっ放しだったジェッソの蓋がきっちり閉めてある。

“自分の目でしっかり見ろ”か……。

窓の外はまだほんのりと名残の夕焼け。

パリパリとオモチャみたいな包装を剥いてパクンと飴を口に入れる。

甘い。

でもちょっとだけ気持ちが落ちついたのが自分でも分かった。

私は片付けを終えると美術室を後にした。