中山君、怒ってるかな。あの調子じゃ訳分かんなくて呆然としてるんだろうな。

ただこの髪見せて『白川さん、似合う』って言われたかっただけだったのに。

っていうか、それも勝手に私が考えて期待しちゃっただけで、現実には中山君は何もしてないんだもん。

きっと今頃嫌な気持ちになってるんだろうな。

きっと『あんな恐い顔、するんだ』って思われちゃったな……。

「あ~あ、嫌だ。嫌だ」

それは自分でも驚く程にショックな出来事だった。


人気の少ない生徒指導室等が並ぶ廊下の窓からさす赤に目が止まる。

走るのをやめて窓の外を見ると燃えるような夕日が見えた。

立ち止まってそこから真っ赤な太陽が沈むのを眺めていると、

「おう!どした?」

パコンと頭を軽く叩かれ、顔を覗き込まれた。

ちょっとセンチメンタルになってたのに。いきなり現実に戻されてしまう私。

目の前の人物は教師のくせに髭伸ばしてるし、ちょっと長めの黒髪が高校教師の理想の容貌から大きくかけ離れている。

けど、イケてないかと訊かれればイケてる美術部顧問の島先生だ。