ムカついていた。

あんなに楽しみにしていたのに、私からしたら本当に思い切って染めた髪の毛だったのに。それは褒めてもらえず、そのうえ三上さんとあんな親しげにやり取りする中山君に腹が立って仕方がなかった。

“私が、彼女なのに”

横目に映るのは椅子に座って少女漫画を読みながら涙目になっている中山君。それはまるで萌えないハズの光景。

だけど、だけど!
このイーゼルを投げたらどんなにスッキリするだろう?と思ってしまう私がそこにいた。

ガシャン、ガシャンとイーゼルを立てて油絵をセットしていると『そんなに乱暴にすると壊れない?備品は大切にしようね?』とまるで空気を読まない説教をされた。

「中山君って少女マンガまで読むの?」

なるべく自然に訊くつもりだった。このムシャクシャを隠して訊くつもりだった。

「……うん。って言うかなんで怒ってんの?白川さん?」

なんでそこだけ気づくんだ?

「怒ってなんてないよ!!」

「え?何?」

何?じゃないよ!