どこまでが冗談でどこまでが本気なのか、もう分からないけれど。今の私はそんな事気にしてられない。

だって私には確固たる目的があるんだから。そして『俺』をもう一度『僕』に変えたいんだもん。

「それ、俺が持つよ」

中山君は左手で私の手からキャンバスを奪うと軽々とそれを抱え、階段を昇り続ける。

ガチャンと開けた屋上へ続く扉。

いつも普通クラスのカラフルな人達が使うから、私みたいな生徒はこんなトコなんてほとんど来ない。

「こっち、こっち」

屋上を歩き、その裏にある貯水槽の脇を抜けると、そこには黒い鉄の柵がある。

その柵を越えると、そこはあの第二美術室の前にある非常階段だ。

中山君は1メートル半程はあるかと思われる柵を軽々と乗り越えて行く。

そして振り向くと『それ取って』と油絵をさす。

油絵も無事に柵越えしたら最後は私。

どうしよう、越えられないかも。自分の背丈より少しだけ低い柵を見つめた。